第12回のインタビューは、第11回に続いて、「Be Romantic」監督の冨田幸杜さんです。静止画を用いるという珍しい手法を使った映画が、どのように出来上がったのかお聞きしました!
夢の中の2人
──作品のあらすじを教えて下さい
ロマンティックとアヴァンギャルドという映画を撮ることに失敗した冨田幸杜が、作品の構想を練っている時に夢を見て、夢の中で主役の2人が、「私のことを殺そうとした」「殺さないで」みたいな会話をずっとするんですよ。で、その中で2人はお互いのことを殺さないっていう結論を出すんです。この夢の2人は私の中に潜む2つの感性で、自分の2つの要素が殺し合おうとしてたんだ、これじゃダメだって目覚めて気づいて、うまくいかなかった脚本を、新しい、2人で共存してハッピーエンドにするっていう物語に変える話です。
──なるほど。タイトルの「Be Romantic」は、そのまま、ロマンティックになろうっていう意味ですか。
はい。私の中に眠るロマンティックとアヴァンギャルドがあるんですけど、私は、ロマンティックってアヴァンギャルドなんだなって思ってて。なんかアヴァンギャルドの概念自体がすごいロマンティックっていうか。
前に前に進出しよう、現実から突き放そうっていうのはロマンティックだし、ロマンティックのその力強く美しくあろうとする姿は、アヴァンギャルドじゃないですか。
──確かにそうですね。2つが対立してるって思ってたけど、対立はしてなくて、ロマンティックになりたい、みたいな感じですか。
そうですそうです。でも、「ロマンティックになりたい」じゃなくて、「ロマンティックになりきりたい、なりきりたすぎる」みたいな。それが、「Be Romantic」。Be “Romantic”なんですけど、アヴァンギャルドなロマンティックです。

偶然できた映画
──この作品を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
大学の課題で、映画のワンシーンを写真で表現してくださいっていう課題が出て。普通に写真1枚とかでもいいんですけど、それやるなら、今度撮る映画の主演の子2人にモデルとして出ていただいて、うんうん、実際その、似たような画角で撮りたいなみたい。
似たような映画で撮りたい、似たような雰囲気で、似たような衣装で撮ることで練習したいなって思って、「ひらいて」っていう映画をチョイスしたんです。グロメのレズビアン映画で、元々ロマンティックとアヴァンギャルドもすごいグロメのレズビアン映画だったんで、すごい合ってるなと思って。
で、課題用に再現して撮った写真を繋げてったら、ほんとに映画みたいなんですよ。コンテ劇みたいな。
これ、動画にしてセリフつけたら面白いなと思って。で、脚本書いてみて、シーンを付け足して映画風にしたっていう。
──制作中の印象に残ってることを教えて下さい
夏合宿で出会ったKさんっていう女の子が、すごくアヴァンギャルドだったんですよね。でてくるキャラクターの一人の、五反田さんみたいな子で、すごいもう人の目気にしないで好き勝手やりたいことやるみたいな。その子に私が書いてた脚本を見せた時に、「五反田を殺しちゃダメでしょ」って言われたのがきっかけで殺さなくなったんですよ。それで私、殺さない脚本どうしようってなった時に、この映画の企画を、この映画の写真、あそこの大学の課題やってて。だからKさんに合わなかったら、この作品は撮れなかったかもしれない。
──すごい偶然が重なって。

とにかく創ろうぜ
──まだ見てない人に、メッセージをお願いします。
諦めんな、ですね。別にボツになってもうまくいかなくてもいいから、新しい可能性を感じ取って、そこから創作してほしいっていうか。とにかく創ろうぜ。創ってこうぜっていう感じの映画です。
冨田幸杜

スピカ1895の25期メンバー。過去監督作に、「戯言」、「曖昧vivid⭐︎」がある。不完全な人の心に温もりを伝える創作者を志している。